3Dプリンターは、本体を買えばそれだけで完結、というわけではありません。造形物をはがすヘラ、サポートを切るニッパー、材料の保管用品など、本体以外にそろえておきたいものが意外とあります。ここをそろえずに始めると、届いた初日に「うまくはがせない」「置き場所に困る」といった問題になりがちです。
とはいえ、最初から全部そろえる必要はありません。多くの機種にはヘラやニッパーが付属していますし、足りないものは使いながら足していけば十分です。
この記事では、方式を問わず共通で要るものを先に挙げ、そのうえでFDM方式と光造形方式それぞれで追加になるものを整理します。
必要なもの早見表
細かい説明に入る前に、全体像を一覧にまとめておきます。価格は時期や製品で変わるため、おおよその目安として見てください。
| 必要なもの | 方式 | 光造形方式 | 必須度 |
|---|---|---|---|
| ヘラ(スクレーパー) | ○ | ○ | 必須(付属あり) |
| 精密ニッパー | ○ | ○ | 必須(付属あり) |
| ピンセット・ラジオペンチ | ○ | ○ | あると便利 |
| ヤスリ・紙やすり | ○ | ○ | 仕上げ重視なら |
| フィラメント(PLA) | ○ | ─ | 必須 |
| 防湿保管ケース+乾燥剤 | ○ | ─ | ほぼ必須 |
| フィラメントドライヤー | ○ | ─ | 湿気対策なら |
| 予備ノズル・掃除針 | ○ | ─ | あると安心 |
| レジン | ─ | ○ | 必須 |
| ニトリル手袋 | ─ | ○ | 必須 |
| 洗浄用アルコール | ─ | ○ | 標準レジンなら必須 |
| 洗浄硬化機 | × | ○ | ほぼ必須 |
ここからは、それぞれの道具について、なぜ要るのか、選ぶときのポイントを見ていきます。
まず方式を問わず共通で要るもの
FDMでも光造形でも、造形物を取り出して仕上げる作業は共通です。次の道具は、どちらの方式でも出番があります。
造形物をはがすヘラ(スクレーパー)
できあがった造形物を、土台(ビルドプレート)からはがすための道具です。付属のヘラでは力が要って苦労することが多く、先端が薄くて鋭いものに買い替えると一気にラクになります。プレートと造形物のわずかな隙間に刃を差し込めるかどうかで、はがしやすさがまるで違います。
特に人気なのは、オルファのスクレーパー。切れ味と入り込みやすさで定評があります。金属プレートを傷つけたくない場合は、樹脂製のスクレーパーを併用すると安心です。
サポートを切るニッパー
宙に浮いた部分を支える「サポート材」や、造形時に出る細かいバリを切り取る道具です。プラモデル用の精密ニッパーが使いやすく、刃が薄くてフラットなものを選ぶと、サポートの根元からきれいに切れます。
ツノダのエッジニッパーMEN-115DGやゴッドハンドの「普通のニッパー」GH-PN-125あたりが定番で、1,000〜3,000円ほどが目安です。まず試すだけなら本体付属のニッパーや100均のものでも始められますが、仕上がりにこだわるなら専用品を用意すると差が出ます。
ピンセット・ラジオペンチ
ノズルから垂れた樹脂を取り除いたり、細かいサポートをつまんで外したりするのに使います。先端が細いものだと、入り組んだ場所にも届きやすくて便利です。100均のものでも当面はしのげますが、作業頻度が上がってくると、先端のしっかりした精密タイプがほしくなります。
ヤスリ・紙やすり
造形物の表面や、サポートを切ったあとの跡を整えるための仕上げ道具です。特にFDMは積層痕が残り、光造形もサポート跡が残るので、見栄えを気にするなら用意しておきたいところ。番手違いの紙やすりを数種類そろえておくと、粗削りから仕上げまで対応できます。
FDM方式で追加するもの
FDMを使うなら、材料のフィラメントと、その保管まわりが加わります。
フィラメント(まずはPLA)
FDMの材料です。最初はPLAという素材から始めるのが定番で、低い温度で扱えて反りも少なく、失敗しにくい素材です。最近人気のELEGOO PLAフィラメントは、1kgで2,000〜4,000円ほど。本体にテスト用が少量付属することが多いので、それを使い切るころに買い足す流れで問題ありません。
慣れてきたら、丈夫なPETGや柔らかいTPUなど、作りたいものに応じて広げていくとよいでしょう。素材ごとの選び分けは、フィラメント入門の記事で詳しく扱います。
防湿の保管ケースと乾燥剤
フィラメントは湿気を吸うと造形品質が落ち、糸引きや、造形物がもろくなる原因になります。開封後は、密閉できる保管ケースにシリカゲルなどの乾燥剤を入れて保管するのが基本です。パッキン付きの密閉コンテナ(フィラメント乾燥ボックスなど)に乾燥剤を入れる方法が手軽で、費用も抑えられます。乾燥剤は100均の除湿剤でも代用できます。
フィラメントドライヤー(乾燥機)
湿気を吸ってしまったフィラメントを乾かし直す機械です。梅雨時など湿度の高い時期や、吸湿しやすい素材(ナイロンなど)を使うなら、あると安心します。Crealityのフィラメントドライヤーは見た目もかっこいいんですよね。
PLA中心で、乾燥剤保管をきちんとしているうちは必須ではないので、必要を感じてから買い足すのでも個人的には間に合うと思います。
予備ノズルとノズル掃除の道具
ノズルは使ううちに詰まったり摩耗したりする消耗品です。0.4mmの予備ノズルと、詰まりを通す細い掃除針、交換用のレンチを用意しておくと、いざというときに慌てずに済みます(Bambu Lab A1 mini用、Creality Ender-3シリーズ用など)。掃除針は付属することも多いので、まずは手元の付属品を確認してからで大丈夫です。
光造形方式で追加するもの
光造形は、液体レジンを扱うぶん、FDMより準備するものが増えます。ここは安全と後処理に直結するので、省かずにそろえておきたいところです。
レジン(まずは標準タイプか水洗いタイプ)
光造形の材料です。最初は標準的なレジンか、後処理が水で済むANYCUBICなどの水洗いレジンから始めると扱いやすいでしょう。水洗いレジンなら、洗浄にアルコールを使わずに済むぶん、始めるハードルが下がります。レジンは紫外線で劣化するので、直射日光を避けた冷暗所での保管が基本です。
ニトリル手袋
レジンは素手で触れると肌荒れの原因になるため、手袋は必須です。使い捨てのニトリル手袋を用意し、レジンを扱う作業では必ず着けます。これは「あると便利」ではなく、安全のために欠かせないものなので、絶対に装着して手を守りましょう。
洗浄用のアルコール(水洗いレジン以外の場合)
標準的なレジンを使う場合、造形後に未硬化のレジンを洗い流すための無水エタノールやIPA(イソプロピルアルコール)が要ります。
ちなみに水洗いレジンなら水道水で洗えるので、この費用と手間を省けます。どちらのレジンを選ぶかで、そろえるものが変わってくる点は覚えておくとよいでしょう。
洗浄硬化機(Wash & Cureなど)
造形後に、未硬化レジンの洗浄と、紫外線を当てて仕上げる二次硬化を行う機械です。手作業でもできますが、専用機があると洗浄も硬化もボタンひとつで、仕上がりも安定します。ELEGOOのMercuryシリーズ、AnycubicのWash & Cureシリーズ、CrealityのUW-03などが定番で、洗浄と硬化を1台でこなす2in1タイプが主流です。光造形では実質的に必要になる装置なので、本体と合わせて予算に入れておくと安心です。
キッチンペーパーと換気の準備
レジンは飛び散りやすく、においもあります。汚れをすぐ拭き取れるパックタイプのキッチンペーパーと、換気のできる環境は用意しておきたいところです。窓の近くや換気扇のある場所に設置し、作業中は換気を心がけます。使い終わった未硬化レジンは、紫外線を当てて硬化させてから処分するなど、適切な処理も必要です。
そろえる順番と予算の目安
一度に全部そろえる必要はありません。まずは本体付属品でひととおり試して、足りないと感じたものから買い足すのが、無駄がなく確実です。
共通の道具(ヘラ、ニッパー、ピンセット、ヤスリ)は、合わせて3,000〜5,000円ほどでそろいます。FDMならこれにフィラメントと保管ケースが加わり、光造形なら手袋・洗浄用品・洗浄硬化機が加わります。光造形は洗浄硬化機のぶん、初期費用が一段高くなるので、そこは織り込んでおくとよいでしょう。
100均で十分なもの(乾燥剤、簡易な容器、ピンセットなど)は賢く活用し、仕上がりや安全に直結するもの(ニッパー、手袋、洗浄硬化機)にお金をかける、というメリハリをつけると、費用を抑えつつ失敗も減らせます。
よくある質問
本体を買えばすぐ造形できる?
多くの機種は、テスト用の材料と基本的な工具(ヘラ、ニッパー、掃除針など)が付属しているので、まず試すだけならすぐ始められます。ただし付属の工具は最低限のことが多く、使い込むと専用品に買い替えたくなります。材料も付属分はわずかなので、早めに買い足す前提でいるとよいでしょう。
最低限これだけは、というものは?
FDMなら、フィラメント、造形物をはがすヘラ、サポートを切るニッパー、そしてフィラメントの防湿保管の用意です。光造形なら、レジン、ニトリル手袋、洗浄用品(または水洗いレジン)、洗浄硬化機が要ります。特に光造形の手袋と換気は、安全のために省けません。
道具は100均でそろえてもいい?
乾燥剤、簡易な保管容器、ピンセットあたりは100均でも当面しのげます。一方で、ニッパーは刃の精度が仕上がりに直結し、安すぎるものはかみ合わせが悪いことがあるので、ある程度のものを選ぶ価値があります。光造形の手袋や洗浄硬化機のように、安全と品質に関わるものは、きちんとした製品を用意するのがおすすめです。
フィラメントの乾燥機は最初から必要?
必須ではありません。開封後に密閉ケースと乾燥剤で保管していれば、PLA中心のうちは乾燥機なしでもしのげます。梅雨時に造形が安定しない、吸湿しやすい素材を使い始めた、といったタイミングで買い足すのが無駄がありません。
まとめ|付属品から始めて足りないものを足そう
- 造形物をはがすヘラとサポートを切るニッパーは方式を問わず使う
- FDMはフィラメントと防湿の保管用品が加わる
- 光造形は手袋・洗浄用品・洗浄硬化機が加わり初期費用が一段高くなる
- 乾燥剤や簡易容器は100均、ニッパーや手袋はきちんとした製品にメリハリをつける
- 最初は本体付属品で試し足りないものから買い足すのが無駄がない
3Dプリンターの周辺道具は、リストにすると多く見えますが、いきなり全部そろえる必要はありません。付属品で始めてみて、実際に使いながら「これがあれば」と感じたものを足していくのが、費用の面でも失敗の面でもいちばん確実です。
自分の使う方式が決まっていない場合は、まず方式ごとの違いから見てみるとよいでしょう。
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