iPadは現行の4モデルすべてが、Wi-Fi利用時で最大10時間というバッテリー駆動時間を公称しています。では、バッテリーの持続時間は本当に同じなのでしょうか?
バッテリー容量には、iPad miniの19.3WhからiPad Pro(M5)13インチの38.99Whまで2倍以上の差があります。実際、公称値が同じでも、実際の減り方はモデルごとに違っています。
この記事では、iPad(A16)・iPad mini(A17 Pro)・iPad Air(M4)・iPad Pro(M5)のバッテリーを比較して、用途別の選び方まで解説します。
現行iPadは全モデルが「最大10時間」で横並び
Appleが公表しているバッテリー駆動時間は、4モデルすべてでWi-Fiでのインターネット利用およびビデオ再生が最大10時間、モバイルデータ通信でのインターネット利用が最大9時間です。
iPad miniだから極端に短い、iPad Proだから長く持つ、という関係にはなっていません。
そして、このようにバッテリー持続時間が揃っているのは、Appleが画面サイズとチップの消費電力に合わせてバッテリー容量を決めているからです。画面が大きく処理も重いモデルには大きな電池を積み、小さいモデルには小さい電池を積む。結果として、公称値だけは同じところに着地するわけです。
ただしこのテスト条件には前提があります。Appleは画面の明るさを50%に固定し、明るさの自動調節をオフにしたうえで、2時間23分の映画を連続再生する、あるいは20の一般的なウェブページを閲覧する、という方法で計測しています。屋外で輝度を上げたり、重いアプリを走らせたりする使い方は、この条件とは異なる状況です。
だからこそ、公称10時間はモデル選びの判断材料にはならないと考えたほうがいいでしょう。差が出るのは、容量・画面の作り・チップの効率という3つの組み合わせのほうです。
4モデルのバッテリー比較表
| 項目 | iPad(A16) | iPad mini(A17 Pro) | iPad Air (M4) | iPad Pro (M5) |
|---|---|---|---|---|
| 外観 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
| バッテリー容量 | 28.93Wh | 19.3Wh | 28.93Wh(11インチ)/36.59Wh(13インチ) | 31.29Wh(11インチ)/38.99Wh(13インチ) |
| Wi-Fi利用・ビデオ再生 | 最大10時間 | 最大10時間 | 最大10時間 | 最大10時間 |
| モバイル通信利用 | 最大9時間 | 最大9時間 | 最大9時間 | 最大9時間 |
| 高速充電 | 非対応 | 非対応 | 非対応 | 約30分で最大50% |
| ディスプレイ | 11インチ Liquid Retina(LCD) | 8.3インチ Liquid Retina(LCD) | 11/13インチ Liquid Retina(LCD) | 11/13インチ Ultra Retina XDR(タンデムOLED) |
| 最大輝度 | 500ニト | 500ニト | 500ニト(11インチ)/600ニト(13インチ) | SDR時1,000ニト |
| リフレッシュレート | 60Hz | 60Hz | 60Hz | 10〜120Hz(ProMotion) |
| チップ | A16 | A17 Pro | M4 | M5 |
| 重量(Wi-Fi・11インチ相当) | 477g | 293g | 464g | 444g |
| 電池の傾向 | 容量は十分。輝度を上げると減りやすい | 容量は最小だが、画面が小さく閲覧中心なら余裕がある | 効率と容量のバランスが最も良く、一日通して安定 | 減りは速めだが、高速充電で取り返せる |
| 向いている用途 | 家での動画視聴、学習、PDF閲覧 | 移動中の閲覧、電子書籍、メモ | 学習、仕事、ノート、軽めの制作 | イラスト、動画編集、屋外での高輝度表示 |
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13インチモデルの重量は、iPad Air(M4)が620g前後、iPad Pro(M5)が579gです。手に持って使う時間が長い人ほど、この差は無視できないですね。
同じ28.93WhでもiPad(A16)とiPad Air(M4)でバッテリー持ちが変わる
この比較でいちばん面白いのは、iPad(A16)とiPad Air(M4)の11インチが、まったく同じ28.93Whという点です。画面サイズも同じ11インチなので、条件がきれいに揃っています。
しかし、バッテリー持ちを変えうる要因は、それぞれのチップにあります。A16チップはiPhone 14 Pro世代のチップで、日常の処理には十分な性能がある一方、M4チップは製造プロセスも新しく、同じ処理をより少ない電力でこなせる設計です。
軽い使い方であれば、この差はほとんど表に出てきません。ブラウジングやPDFの閲覧、動画の再生程度なら、どちらも同じくらいの時間動きます。
差が見えてくるのは、複数のアプリを並べたり、書き出しのような重い処理を挟んだりしたときです。負荷がかかる場面でA16は電力を多く使い、そのぶん減りが速くなります。
もうひとつ、画面の作りも異なります。iPad(A16)はフルラミネーションではないディスプレイを採用しており、パネルとガラスの間に空気の層があります。表示品質の話として語られることが多い部分ですが、同じ明るさに見せるために必要な電力も変わってくるわけです。
モデル別|電池の減り方の傾向
iPad(A16)|容量は十分、輝度を上げると減りやすい
28.93Whという容量は、11インチのiPadとして不足のない量です。家の中で明るさを抑えて使うぶんには、一日中つけっぱなしでも問題なく動き続けます。
減りが気になり始めるのは屋外です。最大輝度が500ニトなので、日差しの下では明るさをほぼ上限まで上げることになり、そこで一気に消費が増えます。屋外で長時間使う前提なら、他のモデルを見たほうがいいでしょう。
注意点として、iPad(A16)はApple Pencil Proに非対応で、対応するのはApple Pencil(USB-C)とApple Pencil(第1世代・アダプタ経由)です。バッテリーとは別の話ですが、ノート用途で選ぶ人は先に確認しておいたほうが安心です。
iPad mini(A17 Pro)|容量は最小でも、閲覧中心なら一日持つ
19.3Whという容量は、現行4モデルの中で最も小さい数字です。iPad Pro(M5)の11インチと比べるとおよそ6割しかありません。数字だけを見ると心配になりますが、実際の体感はもう少し複雑です。
画面面積で比べると、iPad miniの8.3インチはiPad Airの11インチのおよそ6割弱です。それに対してバッテリー容量は3分の2ほどあります。つまり画面面積あたりで見れば、iPad miniのほうが電池に余裕がある計算になります。電子書籍やブラウジングのように画面をただ光らせているだけの用途で、miniが粘りやすいのはこのためです。
筆者もiPad miniは資料閲覧とブラウジングが中心の使い方をしていて、電池の減りで困った記憶がほとんどありません。ただし個人的には、これはmini自体の省電力性だけが理由ではないと思っています。miniで制作作業をすることがそもそも少ないので、負荷の軽い使い方しかしていない、という側面が大きいはずです。
そして注意しておきたいのが、A17 ProがiPhone 15 Pro譲りの高性能チップだという点です。3Dゲームや動画編集のように全力を出す処理をさせると、19.3Whは一気に減ります。軽い用途では頼れる一方、重い用途では最も余裕がないモデルになります。
iPad Air(M4)|11インチなら効率と容量のバランスが一番いい
11インチのiPad Air(M4)は、28.93Whという十分な容量にM4チップの効率が組み合わさった構成です。学習やノート、資料作成といった一日中使うタイプの用途に対して、現行モデルの中で最も安定した働きをしてくれます。
13インチを選ぶと容量は36.59Whまで増えますが、画面も大きくなり最大輝度も600ニトに上がるため、持ち時間そのものが劇的に伸びるわけではありません。13インチを選ぶ理由は電池ではなく、作業領域の広さのほうにあります。
注意点は充電です。iPad Air(M4)は高速充電に対応していません。残量が少ない状態から短時間で回復させたい場面では、iPad Pro(M5)との差がはっきり出ます。
iPad Pro(M5)|減りは速い側、ただし充電で取り返せる
iPad Proの電池が速く減ると言われるとき、原因をOLEDに求める説明をよく見かけます。ただタンデムOLED自体はむしろ効率の良い方式で、Appleはこの技術を使って本体を薄くしながら同じ10時間を実現しています。
実際に減りを速めているのは、別の要素です。SDR時で1,000ニトという明るさ、最大120HzのProMotion、そして重い処理を回したときのM5の消費電力。この3つが重なると、31.29Whという容量でも短時間で削られていきます。
筆者の場合、朝100%の状態で持ち出してブラウジングと資料作成を中心に一日使うと、夜には30〜40%台まで落ちています。公称10時間という数字と比べると、実際の使い方ではもう少し早く減る、という感覚に近いでしょう。
一方で、iPad Pro(M5)だけに与えられている武器があります。約30分で最大50%まで回復する高速充電です。減りが速いという弱点を、充電の速さで打ち消せる設計になっています。
注意点は、この高速充電に付属の20W電源アダプタは使えないことです。別売りの40Wダイナミック電源アダプタ(最大60W対応)など、60W以上を供給できるUSB-C電源アダプタが必要になります。また、極端に暑い場所や寒い場所では、iPhoneと同じように充電速度が落ちたり高速充電が働かなかったりする場合があります。
電池の減り方を決める4つの要素
ディスプレイの明るさ
減り方に最も大きく効いてくるのが明るさです。Appleのテストは明るさ50%で行われているので、屋外で輝度を上げて使えば、公称値より短くなるのは当然と考えておいたほうがいいでしょう。
明るさの自動調節をオンにしておくと、暗い場所では自動的に輝度が下がります。設定を意識するだけで、一日の持ち時間はそれなりに変わります。
リフレッシュレート
iPad Pro(M5)だけが10Hzから120Hzのアダプティブなリフレッシュレートに対応しています。スクロールの滑らかさと引き換えに、書き換え回数が増えれば電力も使います。
ただしProMotionは表示内容に応じて自動的にリフレッシュレートを下げる仕組みなので、静止した文書を読んでいるだけの場面では消費が抑えられます。常に120Hzで動いているわけではありません。
チップにかかる負荷
同じチップでも、ブラウジング中と動画書き出し中では消費電力がまったく違います。A17 ProやM5のような高性能チップは、上限まで使ったときの消費も大きいという性質があります。
軽い作業しかしないなら高性能チップでも電池は減りません。逆に言えば、重い作業をする人ほど容量の大きいモデルを選ぶ意味が出てきます。
モバイル通信とテザリング
Cellularモデルの公称値が最大9時間とWi-Fi時より1時間短いのは、通信モジュールが電力を使うからです。iPhoneからのテザリングで使う場合も、Wi-Fi接続を維持し続けるぶん消費が増えます。
外出先で長時間使う予定があるなら、この1時間の差は覚えておいたほうがいいでしょう。
充電の速さという、もうひとつの差
バッテリーの比較というと持ち時間ばかりが注目されますが、どれだけ速く回復できるかも実用上は同じくらい重要です。
現行4モデルで高速充電に対応しているのは、iPad Pro(M5)だけです。60W以上のUSB-C電源アダプタを使えば、約30分で最大50%まで戻せます。カフェで30分休憩する間に半分回復する、という使い方ができるのはこのモデルだけです。
他の3モデルは通常の充電速度になります。iPadは全モデルとも80%までは比較的速く充電され、80%を超えるとバッテリーへの負担と発熱を抑えるために速度が落ちる設計になっています。急いでいるときは80%で切り上げるほうが効率的です。
バッテリーを長持ちさせる設定
おすすめ設定①|充電上限を80%に
ひとつが充電上限80%です。設定アプリから「バッテリー」を開き、「バッテリーの状態」に「上限80%」の項目があれば使えます。2024年以降に発売されたiPadが対象で、有効にすると80%で充電が止まり、75%を下回ると再開します。自宅で電源につないだまま使う時間が長い人ほど効果があります。
なお上限80%を設定していても、残量表示の精度を保つためにiPadはときどき100%まで充電します。これは異常ではありません。
おすすめ設定②|バッテリー残量が低いときは低電力モードを使おう
もうひとつが低電力モードです。背景での処理や視覚効果を抑えて消費を減らします。ただし80%以上まで充電されると自動的にオフになるので、常時オンにしておくことはできません。
そもそもの話として、iPadのバッテリーはフル充電サイクルを1,000回繰り返した後も本来の容量の80%を維持するよう設計されています。神経質になりすぎる必要はないと思いますが、上限80%のように手間なく使える機能は活用しておいて損はありません。
用途別の選び方
家での動画視聴と学習が中心なら|iPad(A16)
明るさを抑えた室内利用が中心なら、28.93Whという容量で十分に足ります。屋外での長時間利用がないなら、価格を抑えられるこのモデルが断然おすすめです。
持ち歩いて閲覧するのが中心なら|iPad mini(A17 Pro)
293gという軽さと、画面面積に対して余裕のあるバッテリー構成の組み合わせは、移動中に使う人にぴったりです。電子書籍やメモ、ブラウジングであれば一日持ち歩いても不安がありません。ゲームや制作作業を長時間やる予定があるなら、別のモデルを選ぶほうがいいでしょう。
仕事とノートで一日使うなら|iPad Air(M4)
28.93WhとM4チップの効率という組み合わせは、朝から晩まで使うスタイルに最も合っています。高速充電に対応していない点だけは把握しておきたいところですが、そもそも減りにくいので困る場面は多くないはずです。
制作作業と屋外利用が重なるなら|iPad Pro(M5)
減りが速い側のモデルではありますが、約30分で50%という高速充電がそれを補います。1,000ニトの明るさが必要な屋外作業や、動画編集のような重い処理をする人にとっては、この充電速度が効いてきます。60W以上のUSB-C電源アダプタを別途用意する前提で選んでください。
よくある質問
iPadで一番バッテリーが長持ちするモデルは?
公称値では4モデルとも最大10時間で同じです。実際の使い方で比べると、11インチのiPad Air(M4)が最も安定します。28.93Whという容量とM4チップの効率のバランスが良く、一日を通した用途に向いています。
iPad miniはバッテリーが小さいから不安?
19.3Whは現行モデルで最小ですが、画面も8.3インチと小さいため、閲覧中心の使い方であれば不足しません。ただし3Dゲームや動画編集のような重い処理では最も早く減ります。
13インチを選べばバッテリーは長持ちする?
容量は増えますが、画面が大きくなり消費も増えるため、持ち時間はほぼ変わりません。公称値も11インチと同じ最大10時間です。13インチは作業領域の広さで選ぶモデルと考えてください。
iPad Proの高速充電には何が必要?
60W以上を供給できるUSB-C電源アダプタが必要です。付属の20W電源アダプタでは高速充電になりません。Apple純正なら40Wダイナミック電源アダプタ(最大60W対応)や70W USB-C電源アダプタが該当します。
充電上限80%は設定したほうがいい?
電源につないだまま使う時間が長い人には有効です。設定アプリの「バッテリー」から「バッテリーの状態」を開き、「上限80%」の項目があれば使えます。外に持ち出す機会が多く、毎回フル充電しておきたい人は無理に使う必要はありません。
OLEDのiPad Proは電池の減りが速い?
タンデムOLED自体は効率の良い方式で、これが直接の原因ではありません。減りを速めているのは1,000ニトの明るさ、最大120HzのProMotion、そしてM5に高い負荷をかけたときの3つです。
まとめ|公称値ではなく、使い方で選ぶ
- 現行4モデルの公称バッテリー駆動時間は、Wi-Fi利用で最大10時間、モバイル通信で最大9時間と横並び
- バッテリー容量はiPad miniの19.3Whが最小、iPad Pro(M5)13インチの38.99Whが最大
- iPad(A16)とiPad Air(M4)11インチは同じ28.93Whで、差はチップの効率と画面の作りに出る
- iPad Pro(M5)だけが高速充電に対応し、60W以上のアダプタで約30分で50%まで回復する
- 減り方を左右するのは容量よりも、画面の明るさ・リフレッシュレート・処理の重さ
一日を通して安定して使いたいなら、11インチのiPad Air(M4)が最もバランスの取れた選択になります。持ち運びを最優先し、閲覧やメモが中心であればiPad mini(A17 Pro)で不足はありません。室内での動画視聴や学習が中心ならiPad(A16)で十分ですし、屋外での高輝度表示や重い制作作業が前提なら、高速充電を備えたiPad Pro(M5)が応えてくれます。
判断の軸は容量の数字ではなく、どこで、どのくらいの明るさで、どんな重さの作業をするかです。
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